2023.10.20
インプラントとは何か?構造・治療の流れ・メリットを歯科医が解説
「インプラント」という言葉を耳にする機会が増えましたが、実際にどのような治療なのか、詳しくご存じでしょうか。インプラント治療は、歯を失った部分に人工の歯根を埋め込み、その上に人工の歯を装着する治療法です。
従来の入れ歯やブリッジと異なり、インプラントは顎の骨に直接固定されるため、天然歯に近い噛む力と見た目を取り戻すことができます。しかし、外科手術が必要なこと、治療期間が長いこと、費用が高額になることなど、検討すべき点も少なくありません。
この記事では、インプラント治療の基本的な仕組みから、他の治療法との違い、メリットとデメリットまで詳しく解説します。
インプラント治療の
基本的な仕組み
インプラント治療は、失った歯の機能を回復させるために、顎の骨に人工の歯根を埋め込む治療法です。この治療法は、1965年にスウェーデンの歯科医師ブローネマルク博士によって臨床応用が始まり、現在では世界中で確立された治療法となっています。
インプラントの構造と3つのパーツ
インプラントは、主に3つのパーツで構成されています。第一に「インプラント体(フィクスチャー)」と呼ばれる部分で、これが顎の骨に埋め込まれる人工歯根にあたります。多くの場合、チタンまたはチタン合金という金属が使用されます。チタンは人体に対して非常に高い親和性を持ち、骨と結合する「オッセオインテグレーション(骨結合)」という現象が起こるため、インプラント材料として広く採用されています。
第二に「アバットメント(支台部)」があります。これはインプラント体と人工歯を連結する部品で、歯茎を貫通してインプラント体の上部に取り付けられます。アバットメントの形状や角度を調整することで、最終的な人工歯の位置や向きを適切に設定することができます。
第三に「上部構造(人工歯冠)」と呼ばれる、実際に見える部分の人工歯があります。これはセラミックやジルコニアなどの材料で作られ、天然歯に近い色や形を再現します。上部構造の材質や製作方法によって、審美性や耐久性が大きく変わってきます。
オッセオインテグレーションとは
インプラント治療が成功する最も重要な要素が「オッセオインテグレーション」です。これは、チタン製のインプラント体が顎の骨と直接結合する現象を指します。
インプラント体を顎の骨に埋め込むと、骨の細胞がチタンの表面に付着し、やがてチタンと骨が一体化します。この過程には通常、下顎で約3ヶ月、上顎で約4〜6ヶ月の期間が必要です。上顎の方が時間がかかるのは、下顎と比べて骨の密度が低く、やわらかいためです。
オッセオインテグレーションが十分に達成されることで、インプラントは天然歯と同等の力で噛むことができるようになります。この結合は非常に強固で、適切なケアを行えば、長期間にわたって安定した状態を維持できます。
他の治療法との比較
歯を失った場合の治療法には、インプラント以外にもブリッジや入れ歯があります。それぞれの治療法には特徴があり、患者様の口腔内の状態や希望によって最適な選択肢が異なります。
ブリッジ治療との違い
ブリッジは、失った歯の両隣にある健康な歯を削って土台とし、連結した人工歯を橋のように架ける治療法です。この方法は保険適用が可能な場合が多く、治療期間も比較的短いという利点があります。
しかし、ブリッジには大きな問題点があります。まず、健康な隣の歯を大きく削る必要があるため、これらの歯の寿命を縮めてしまう可能性があります。削った歯は虫歯や歯周病のリスクが高まり、将来的にその歯も失う可能性が出てきます。また、失った歯の部分の骨には刺激が伝わらないため、時間とともに骨が痩せていくという問題も生じます。
一方、インプラントは両隣の歯を削る必要がありません。失った歯の部分に独立して人工歯根を埋め込むため、周囲の健康な歯に負担をかけることなく治療を完結できます。また、噛む力が顎の骨に直接伝わるため、骨の吸収を防ぐ効果も期待できます。
入れ歯治療との違い
入れ歯には、部分入れ歯と総入れ歯があります。部分入れ歯は、残っている歯にクラスプ(金属のバネ)をかけて固定します。総入れ歯は、歯茎に吸着させる形で装着します。入れ歯も保険適用が可能で、外科手術が不要という点が利点です。
しかし、入れ歯には装着時の違和感や異物感が強いという問題があります。また、噛む力は天然歯の30〜40%程度にまで低下してしまいます。これは、入れ歯が歯茎の上に載っているだけで、骨に固定されていないためです。さらに、部分入れ歯の場合、クラスプをかけている歯に負担がかかり、その歯も傷めてしまう可能性があります。
総入れ歯の場合、特に下顎では安定が悪く、食事中にずれたり外れたりすることがあります。また、入れ歯の下の骨は年々痩せていくため、定期的に入れ歯の調整や作り直しが必要になります。
インプラントは顎の骨にしっかりと固定されるため、天然歯の80〜90%程度の噛む力を回復できます。装着時の違和感もほとんどなく、食事や会話を自然に楽しむことができます。見た目も天然歯に近く、人前で笑ったり話したりすることへの不安も軽減されます。
インプラント治療の
メリットとデメリット
インプラント治療には多くの利点がありますが、同時に理解しておくべき制約や注意点も存在します。治療を検討する際は、両面をしっかりと把握した上で判断することが重要です。
インプラント治療の主なメリット
インプラント治療の最大のメリットは、天然歯に近い機能を回復できることです。顎の骨にしっかりと固定されるため、硬い食べ物でも安心して噛むことができます。ブリッジや入れ歯では避けていた食べ物も、インプラントなら気にせず食べられるようになります。
審美性の高さも大きな利点です。セラミックやジルコニアで作られた人工歯は、天然歯と見分けがつかないほど自然な見た目を実現できます。金属のバネが見える部分入れ歯と異なり、インプラントは外見上、自分の歯と変わりません。
さらに、周囲の健康な歯を守ることができる点も重要です。ブリッジのように隣の歯を削る必要がなく、入れ歯のように他の歯に負担をかけることもありません。1本の歯を失った場合でも、その部分だけを独立して治療できるため、残っている歯を長持ちさせることにつながります。
また、顎の骨の吸収を防ぐ効果も見逃せません。歯を失うと、その部分の骨は刺激を受けなくなるため、年々痩せていきます。しかし、インプラントは噛む力を骨に伝えるため、骨が維持されやすくなります。これは長期的な口腔の健康を考える上で非常に重要な要素です。
理解しておくべきデメリット
インプラント治療の最も大きな課題は、外科手術が必要であることです。顎の骨にインプラント体を埋め込むため、歯茎を切開して骨に穴を開ける処置が不可欠です。局所麻酔を使用するため手術中の痛みはほとんどありませんが、手術後には腫れや痛みが数日間続くことがあります。
治療期間の長さも考慮すべき点です。インプラント体を埋め込んでから、骨と結合するまでに3〜6ヶ月程度待つ必要があります。その後、アバットメントの装着、人工歯の製作と装着という工程が続くため、全体では半年から1年程度の期間がかかることも珍しくありません。
費用面も重要な検討事項です。インプラント治療は基本的に自由診療となるため、全額自己負担となります。1本あたり30万円〜50万円程度が一般的な相場で、複数本必要な場合は高額になります。ただし、医療費控除の対象となるため、確定申告によって税金の還付を受けることは可能です。
また、すべての人がインプラント治療を受けられるわけではありません。重度の糖尿病や骨粗鬆症、心疾患などの全身疾患がある場合、手術のリスクが高くなります。また、顎の骨の量や質が不足している場合は、骨を増やす追加の手術が必要になることもあります。喫煙習慣がある方は、インプラントの成功率が低下するため、治療前の禁煙が強く推奨されます。
当院のインプラント治療
やまもと歯科大久保院では、総合歯科として幅広い治療に対応しながら、インプラント治療にも力を入れています。院長の山本は日本口腔インプラント学会会員として、専門的な知識と技術を習得しており、安全で質の高いインプラント治療を提供しています。
精密診断と治療計画
当院では、インプラント治療を始める前に、歯科用CTを用いた精密検査を必ず実施します。CTは顎の骨の状態を三次元的に評価できるため、骨の厚みや高さ、神経や血管の位置を正確に把握することができます。
これらの検査結果をもとに、患者様一人ひとりに最適な治療計画を立案します。インプラントを埋め込む位置や角度、使用するインプラントの種類やサイズなどを詳細に検討し、安全で確実な治療を実現します。治療計画は患者様にも分かりやすく説明し、疑問や不安があれば納得いくまでお答えします。
予防歯科を軸とした継続的なケア
インプラント治療の成功は、手術が終わった後のメインテナンスにかかっています。インプラントは虫歯にはなりませんが、適切なケアを怠ると「インプラント周囲炎」という歯周病に似た病気になる可能性があります。
当院は予防歯科を軸とした診療を行っており、インプラント治療後も定期的なメインテナンスを重視しています。3〜6ヶ月ごとの定期検診では、インプラント周囲の状態をチェックし、プロフェッショナルケアを実施します。また、患者様ご自身が行う日々のセルフケアについても、歯科衛生士が丁寧に指導します。
当院はitero(口腔内スキャナー)や歯科用CTといった最新機器を完備しており、より精密で効果的な診断・治療を提供しています。総合歯科として、インプラント治療だけでなく、虫歯や歯周病の予防・治療、その他の外科手術にも幅広く対応できることが当院の強みです。
よくある質問
Q. インプラント治療は痛いですか?
手術中は局所麻酔を使用するため、痛みを感じることはほとんどありません。手術後は数日間、腫れや痛みが出ることがありますが、処方される鎮痛剤で十分コントロールできる程度です。多くの患者様が「思ったよりも痛くなかった」と感想を述べられています。当院では患者様の痛みや不安に十分配慮した治療を心がけています。
Q. インプラントはどのくらい持ちますか?
適切なメインテナンスを行えば、インプラントは10年以上、多くの場合20年以上も機能し続けることができます。実際、インプラント治療の10年生存率は90%以上と報告されています。ただし、これは定期的な検診とセルフケアが前提です。喫煙や糖尿病などのリスク要因がある場合は、寿命が短くなる可能性があります。
Q. 高齢でもインプラント治療は受けられますか?
年齢そのものがインプラント治療の制限要因になることはありません。70代、80代の方でも、全身状態が良好であれば治療を受けることができます。むしろ重要なのは、全身疾患の有無や骨の状態、口腔衛生管理ができるかどうかです。糖尿病や骨粗鬆症などの持病がある場合は、主治医と連携しながら慎重に治療を進めます。
Q. 骨が少ないと言われたのですが、インプラントはできますか?
骨の量が不足している場合でも、骨を増やす処置(骨造成術)を行うことで、インプラント治療が可能になることがあります。代表的な方法として、GBR(骨誘導再生)やサイナスリフト(上顎洞底挙上術)などがあります。ただし、追加の手術が必要になるため、治療期間は長くなり、費用も増加します。まずは精密検査を受けて、骨の状態を正確に評価することが重要です。
Q. インプラント治療後の食事制限はありますか?
手術直後は、柔らかい食事を推奨します。手術部位に負担をかけないよう、反対側で噛むようにしてください。1〜2週間程度で通常の食事に戻れますが、完全に骨と結合するまでの期間(数ヶ月間)は、極端に硬いものや粘着性の高い食べ物は避けることをお勧めします。最終的な人工歯が装着された後は、天然歯と同じように食事を楽しむことができます。
まとめ
インプラント治療は、失った歯の機能を天然歯に近い状態で回復できる優れた治療法です。他の治療法と比較して、周囲の健康な歯を守りながら、高い審美性と機能性を実現できることが最大の特徴です。
一方で、外科手術が必要であること、治療期間が長いこと、費用が高額になることなど、検討すべき点もあります。治療を受けるかどうかは、患者様ご自身の口腔内の状態、全身の健康状態、ライフスタイル、経済的状況などを総合的に考慮して決定する必要があります。
当院では、患者様一人ひとりの状況に合わせて、最適な治療法をご提案します。インプラント治療に関心がある方、歯を失って治療法を検討している方は、お気軽にご相談ください。
この記事を監修した人
やまもと歯科 大久保院 院長
山本 康博
院長の山本は、一般歯科から専門的な治療まで幅広い診療を提供し、地域の皆様の口腔健康をサポートしています。国立東北大学歯学部を卒業後、滋賀医科大学医学部歯科口腔外科に入局し、総合歯科や複数の医療法人で院長を歴任。2018年にやまもと歯科大久保院を開院しました。
歯科医師臨床研修指導歯科医師(厚生労働省)の資格を持ち、日本口腔インプラント学会会員として専門的な知識と技術を習得。ストローマンインプラントマスターコースをはじめとする多数の研修に参加し、「家族と同じように、想いを込めて治療する」という理念のもと、患者様に寄り添った丁寧な歯科医療を提供しています。