顎の骨が薄い場合の
インプラント
顎の骨が薄いとインプラントが
出来ない理由
インプラント治療では、顎の骨に人工の歯根を埋め込みます。顎の骨が薄いと、この人工歯根をしっかりと支えることが難しくなります。骨が十分にある場合に比べて、インプラントが安定せず、長期間にわたってしっかり機能することが困難になるためです。他にも、天然の歯の歯根に比べてインプラントは形状が細いので清掃性の向上を目的に骨を分厚くする場合もあります。
インプラントをするのに必要な骨の厚み
インプラント治療には、一定の骨の厚さが必要です。一般的には、骨の厚さが最低でも3mm以上は必要とされています。これ以下になると、インプラントの安定性に問題が生じ、治療が難しくなります。
骨が薄い場合のインプラントのリスク
骨が薄い場合、インプラントが顎の骨にしっかりと固定されないリスクがあります。これにより、長期的な安定性を失ってインプラントの動揺や脱落の可能性が高まるほか、周囲の骨や組織に損傷を与える恐れがあります。
顎の骨が薄くなる原因とは?
顎の骨が薄くなる主な原因には、加齢・歯の長期間の欠損・歯周病・遺伝的要因・栄養不足などがあります。これらの要因により、骨の密度が低下し、量が減少することがあります。その他、抜歯適応の歯を長期間残すことで顎の骨が薄くなってしまうこともあります。
顎の骨が薄い場合の治療方法
骨造成治療
骨造成治療は、顎の骨が薄い場合や量が不足している場合に、骨を増やすための治療です。人工の骨材料(従来は、牛由来の骨を使用することが多かったですが最近は完全に人工の骨の材料を使用することも増えてきました。)を使用する場合や、患者自身の骨を使う場合があり、これにより骨を分厚くすることが可能となりインプラント治療を行える状態にします。
骨造成法のメリット・デメリット
メリット
- インプラント治療の可能性が広がる
骨造成法によって、元々インプラントが難しかった患者さんでも、治療を受けることが可能になります。
- 機能的な回復
歯の機能を向上させ、噛む力を回復させることができます。
- 見た目の改善
歯のない部分に骨が再生されることで、見た目の美しさが回復し、自然な笑顔を取り戻すことができます。
デメリット
- 治療期間が長い
骨が十分に成長するまで時間がかかり、治療全体の期間が長くなることがあります。
- コストが高い
骨造成治療は技術的に複雑であり、治療費が高くなることがあります。
- 手術に伴うリスク
手術には感染のリスクや、まれに予期しない合併症が生じる可能性があります。
骨誘導再生法(GBR法)
骨誘導再生法(GBR法)は、特定の材料を使って骨を再生させる方法です。この治療では、バリアメンブレンを使用して骨と非骨組織の間に空間を作り、新しい骨の成長を促します。特に、インプラント治療の前に顎の骨を増やすのに有効です。骨を作る処置は、人工歯根(インプラント)骨に埋め込む処置よりを難易度が少し高いので処置時間が少し長くなったり、処置後に処置部位が腫れるなどの副反応を伴うことをよく目にします。(#人工歯根(インプラント)を骨に埋入すること自体は痛み止めを飲み忘れるくらい痛みは伴わないことが多いです。)
サイナスリフト法
サイナスリフト法は、特に上顎の臼歯部に位置する歯を失った際に、インプラントを埋め込むための骨の量を増やす手術です。上顎の骨は、その下にある空洞である副鼻腔の一つ上顎洞(サイナス)に近いため、ここに骨を増やすためには、サイナスの底を慎重に持ち上げて(リフトして)、その間に新しい骨を形成する空間を作ります。この方法は、骨量が不足しているために通常のインプラントが難しい場合に選択される治療法で、インプラント治療の適用範囲を広げることができるという大きな特徴があります。
骨造成治療の流れと治療期間
治療の流れ
- 初診・カウンセリング
まずは患者様の口内を詳しく診察し、レントゲンやCTを使って正確な診断とともに現在の骨の状態を確認します。なぜインプラントを希望されたのか、他の治療法と比較してインプラントが最善なのかなども専門のカウンセラーと一緒に確認していきます。
- 治療計画の立案
患者様の状態に合わせて、どの骨造成法が適切か決定し、治療計画を立てます。この計画には、必要な手術の内容や、期待できる結果、必要な期間などが含まれます。
- 手術
局所麻酔を使用して、計画に基づいた手術を行います。手術では、人工の骨材料を使う場合や、患者様自身の骨を使う場合があります。
- 回復期間
手術後、新しく造成された骨が健康な状態になり、十分な強度を持つまで回復を待ちます。この期間中は、定期的なフォローアップが必要です。
- インプラント埋入
骨造成後に十分な骨量と強度が確認できたら、インプラントの埋入手術を行います。
- 最終的な復旧
インプラントに人工の歯を取り付け、咬合(噛み合わせ)の調整を行い、治療を完了します。
治療期間
骨造成法の治療期間は、手術の種類や患者様の回復状況によって異なります。一般的には、手術からインプラントの埋入までの期間は、数ヶ月から半年以上かかる場合が多いです。これは、新しい骨がしっかりと成長し、インプラントを支えるのに十分な強度を持つまでの時間が必要だからです。その後、インプラントに人工の歯を取り付けるまでさらに数週間から数ヶ月かかることもあります。
患者様の健康状態や骨の成長速度は個人差がありますので、正確な治療期間は担当の歯科医師との相談の上で決定されることになります。